犬における感染性心内膜炎の診断のための血清心筋トロポニンⅠ濃度の評価
1 August 2022 – News

感染性心内膜炎(IE)は心臓の弁の少なくとも一つあるいは心腔の心内膜面の炎症を引き起こす微生物感染である。
生前確定診断はしばしば困難であり、修正Duke基準の充足に依存する。それにもかかわらず、小基準が主に全身症状および非特異的症状であるという事実のように、これらの基準におけるいくつかの避けられない制限が存在する。
心筋トロポニンⅠの循環血清濃度(cTnl)は心筋壊死および炎症の症例においてしばしば増加する。この上昇はIEを伴う人において一般的であり、これらの人では異常なcTnl濃度はより悪い予後とも関連する。それにもかかわらず、IEを伴う犬における診断的なあるいは予後的なマーカーとしてのcTnlの使用は報告されていない。
この回顧的研究の目的はcTnlの血清濃度がIEを伴う犬と、粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)を伴う群と免疫介在性疾患(IMD)を伴う群である、2つの他の群を区別することが出来るかを決定することであった。cTnlの血清濃度はIEを伴う犬において有意により高く、この上昇はより悪い生存期間とも関連するという仮説が立てられた。
IEを伴う29頭の犬、MMVDを伴う27頭の犬、IMDを伴う16頭の犬がこの研究に含まれた。IEを伴う犬の26頭がIEの確定診断のための修正Duke基準を満たした。残りの3頭は参加した専門医によって診断された。
これらの3つの群間でcTnlの血清濃度に関する有意差が検出され、IE群がより高い値を示した。この群の動物では、cTnlはIEを伴う犬と他の心臓弁病変を伴う犬とを区別するための有用な診断ツールであることが証明された。0.625ng/mlのカットオフ値は100%の特異度を有することが証明された。
IEの診断が修正Duke基準にのみ基づく場合、他の追加的検査はIEの診断を助ける可能性がある。従って、著者らは0.65ng/ml以上の血清濃度の使用が犬における小基準として用いられることを提案する。そうであっても、感度が低いため、低置でIEを除外することは不可能であることは忘れられてはならない。
Kilkenny, E, Watson, C, Dukes-McEwan, J, et al. Evaluation of serum cardiac troponin-I concentrations for diagnosis of infective endocarditis in dogs. J Vet Intern Med. 2021; 35( 5): 2094- 2101. https://doi.org/10.1111/jvim.16234